2013年6月13日木曜日

まっとうな仕事

「字幕翻訳の世界に限らず、若い人にまっとうな仕事をさせてあげてほしい」――東京新聞で見かけた太田直子さん(字幕翻訳家)の言葉に、思わずウルッときた。映像翻訳を初めて10年、キャリアも年齢も「若い人」ではないけれど、仕事に対する危機感はいつもある。太田さんが嘆くように「早く!安く!」の声は年々エスカレートしているし、かと言ってじっくり取り組める仕事だけ選んでもいられない。自分の中で譲れないラインはあるけれど、断ってから「やるべきだったかも~!」と悩むこともしばしば。

 それでも私が仕事を始めた頃は、まだ「がんばれば翻訳で生活できる」希望があった。時給換算すると泣けるのは自分の能力不足のせいで、仕事に慣れ、効率が上がると、そこそこ稼げた。その延長でなんとか今まで続けている。翻訳の質を厳しくチェックしてくれる「大人」が周りにいたのも、つくづくありがたいと思う。(太田さんは「絶滅危惧種の“本物の大人”」と表現。そうなの!?)

 太田さんの言葉にウルッと来るのは、次の世代を育てようという気概を感じるから。こうした先輩方が苦労して道を開いてくれたから、私たちが仕事をできる。私もいつの間にやら、中堅に足を踏み入れてる。ここで踏ん張らないと、下の世代にどんどんしわ寄せがいってしまう。周りに流されず、自分にできることを模索しながら翻訳の質を上げること。今の自分に思いつくのはそのくらいだけど、がんばろ。いつになく使命感を感じた夜でした。(izumi)