2014年6月1日日曜日

セリフの語尾

セリフの語尾

こんにちは。emiです。夏が近づいてきましたね。さて、今回は翻訳者らしく言葉についてお話ししようと思います。

字幕を作る際、悩むのが登場人物の口調です。各人物の性別、年齢、性格などを踏まえて、どんな口調がふさわしいかを考えます。でも字幕では、普段の話し言葉よりも女性は女性らしく、男性は男性らしい言葉が使われていると思いませんか?

まずは女性の場合。「~よね」「~わ」など、いわゆる女口調にするのが一般的なようです。10代の若者には「~だよね」のようにカジュアルな言葉を付ける傾向が出てきましたが、現実には30代40代の女性もそちらを使いますよね。でも字幕では女口調にする。自然なセリフを目指しているのに、なぜなのか。私は一時期、この傾向がなくなればいいと思い、人知れずもがいていました(笑)そんな時、とある小説家が「女性を女口調にする理由は、そうしないと男勝りな女性という印象になるから」と書かれているのを読んで、すごく納得しました。確かにそうだと思います。

次に男性の場合。1つ例を挙げてみます。以前担当した刑事ドラマで、主人公の刑事が電話を取るシーンがありました。英語スピーカーは、電話を取ると自分の名前だけを言うことがよくあります。この時も「Conner.(彼の名字)」と一言だけ。捜査チームの厳格なボスでしたので、「コナーだ」がしっくりくる気がしましたが、そこで、「待てよ。現実に電話を取って、“○○だ”なんて言う人いないんじゃ…?」と思いました。皆さんの周りにいるでしょうか。私は思い浮かばなかったので、「コナーです」として納品しました。でも結局、キャラクターにそぐわないと指摘されて「コナーだ」に修正しました。やっぱりそうかーという感じで終わったのですが、その後、何気なく日本の刑事ドラマを見ていたら、主人公の刑事が「○○だ」と言って電話に出ていました。なんだ、悩まなくてよかったんだ!と思いました(笑)このドラマに関してはまったく違和感がなかったのです。ただ、概して違和感を持つ人は大勢いるようで、ネット上には「なぜドラマ(邦洋問わず)では普段の話し方と違う言葉が使われるのですか?」といった内容の質問が多く見られます。日本作品や海外モノの吹替版なら、役者さんの技量で余計な女らしさや男らしさは出ないようにできるのかもしれないので、そのうち普段の話し方と同じになることも考えられますね。字幕のほうが難しいかなと思います。

字幕でこうした語尾を使う理由はまだあります。同じ語尾が続くと単調に見えてよくないとされるので「~よね」「~わ」「~んだ」などで変化を付けるわけです。
また、1枚の字幕に2文を入れる場合にも便利です。たとえば、

現場に行ってきた
君は犯人じゃない

という字幕の場合、「話者が現場に行って、君が犯人じゃないことが分かった」という意味なのですが、「現場に行ってきた君」と読めなくもありません。ここで1行目を「現場に行ってきた“んだ”」とすると、話者が行ったことが明確になります。視聴者に一瞬でも「ん?」と思わせてはいけないのが字幕なので、それを避ける手段です。
個人的にはやりすぎると気持ち悪いので適当に抑えますが、いろいろ考えているうちに、以前のように「すべて取り除きたい!」とは思わなくなりました(笑)

最後に、非常に興味深いサイトと書籍を見つけたのでご紹介しておきます。

●テレビドラマにおける女性言葉とジェンダーフィルター
『文末詞(終助詞)使用実態調査の中間報告より』水本光美氏(北九州市立大学)
http://www.gender.jp/journal/no5/3_mizumoto.html

●『翻訳がつくる日本語―ヒロインは「女ことば」を話し続ける』 中村桃子著
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013101300010.html

2 件のコメント:

  1. この記事の内容、字幕の口調や語尾に関して、とても興味を持っていたところなので、面白く読ませて頂きました。

    ちなみにですが、肉体的性別と精神的性別が不一致な方が話す言葉の場合、人によっては話し言葉に中性的な印象しかもてないとか、色々と悩ましい事が起こるのだろうと想像するのですが、そのような場合はどんなアプローチをされているんだろう?と興味が湧きました。

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    1. terrysaito さま
      コメントをありがとうございます!嬉しいです!
      ご質問の件は翻訳者によって好みが分かれるところですが、個人的には、たとえば男性であれば、テレビでよく見るいわゆるオネエキャラのような場合は女言葉にし、そうでなければできるだけニュートラルにします。要するに見た目(服装)に合わせるのですが、そうすると同性愛者だということが分かりづらいこともあり、おっしゃるとおり、悩ましいところです。視聴者にそこを分かってもらうために絶対に女言葉にする、という翻訳者もいるようです。最終的にはクライアントさん判断になり、やはり女言葉にしよう、となることもあります。ちなみに、トリログメンバーは全員私と同じ意見でした。

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